次元プロジェクト

トリニティでは、「シンプルなデザインで手軽に購入できる価格設定」をコンセプトにしたオリジナルブランド「Simplism」をはじめ、特色あるさまざまな海外ブランド製品を多数取り扱ってきました。

おかげさまでSimplismは一定の評価をいただき数多くの製品をリリースしてきましたが、新たな試みとして、Simplismや海外ブランド製品にはない、強い個性を持ったラインナップを企画したいと考えました。

そこで生まれたのが、ケイズデザインラボとのコラボレーションシリーズ『次元』です。
ケイズデザインラボが開発した最先端の3Dデジタルデータ作成システム「D3テクスチャー」を使用したこのシリーズは、一般的な二次元のデザイン画から最新テクノロジーを駆使した三次元のモデリングデータに変化を経て、製品へと進化していくことから名付けられました。

次元の生い立ちは、フリーITジャーナリスト/コンサルタント林 信行氏の引き合わせにより、株式会社ケイズデザインラボ 代表取締役 原 雄司氏と、当社代表取締役 星川 哲視が邂逅することで始まりました。
その席上、原氏によりD3テクスチャーのサンプルプレートを見せられた星川は、これまでに見たことのない高精細な表面処理に感嘆し、是非この技術をトリニティの製品作りに利用してみたいと考えました。また原氏は、普段はあくまでも製品構成素材の一部であるため、D3テクスチャーそのものがフォーカスされることは少ないが、この技術の先進性について認知度を高められないか模索していたといいます。

一方、林氏は「あらゆる分野で3Dには可能性を感じていました」「ケイズデザインラボの3D技術には一目置いていましたので、何か最適な形で表に出る機会があれば良いなと思っていました」「意欲的でスピーディーなトリニティとは相性が合うんじゃないかと、直感ではありましたが、両者を引き合わせることで何か良いシナジーが生まれるのではと思いました」と振り返っています。

こうした幸せな出会いも味方し、次元はスタートしました。そこからiPhone 4S、iPhone 5/5s用ケースの発売を経て、今回第三弾となるiPhone 6用ケースへの発売に至ります。
株式会社ケイズデザインラボ 代表取締役 原 雄司氏 株式会社ケイズデザインラボ 代表取締役 原 雄司氏 株式会社ケイズデザインラボ
代表取締役
原 雄司氏
フリーITジャーナリスト/コンサルタント 林 信行氏 フリーITジャーナリスト/コンサルタント 林 信行氏 フリーITジャーナリスト/
コンサルタント
林 信行氏

「All Made in Japan」純日本製であること

次元のもうひとつの大きな個性、それは「All made in JAPAN」。製品そのものの生産はもちろん、製品デザインやパッケージの生産、パッケージング作業にいたるまで、すべてを日本国内だけで行なっています。

もちろん、単に「日本で作られた」というわけではありません。次元は日本でしか実現し得ない高度な技術と、日本にしかできない細やかなデザインによって構成されているのです。

そのひとつが「D3テクスチャー」。ケイズデザインラボが開発した触感デザインプロセス、D3テクスチャーは、布や革といった天然素材や写真を3Dスキャンしたり、元となるデザインをテクスチャーに落とし込み、それをプロダクトのベースに幾重にも重ねて貼り付けることにより、これまでの技術では困難であった自然な風合いや凹凸の再現、また、起伏が重なった複雑なカッティングや成形を可能にしました。これにより、従来にはなかったオリジナル性の高い立体感あるテクスチャーが制作できるのです。

D3テクスチャーで制作した素材は、実際にはプラスチック樹脂にもかかわらず、触れると指先が本物と錯覚してしまうほど天然素材特有のランダムなパターンや特殊な形状を再現しています。

株式会社ケイズデザインラボ 3Dデジタルスカルプター 八島 絵美氏

3Dデジタルスカルプティング

今回のコラボ製品で困難であった点は、iPhone 6の形状によるものでした。iPhone 5/5sの時は直角であったサイドの形状が、iPhone 6では曲線を描いています。ケース背面方向に金型から外していく際に、ケースのサイドへのかかりがiPhone 5/5sより増しており、外しにくさが格段に上がります。

デザインデータが作られた後に、「金型で実際に抜けるような最終データに作り込む」工程が必要となります。データ上ではいくらでも成り立たせることができますが、実際の金型で引っかかりがないように仕上げる必要があります。その上で、iPhoneを装飾するアクセサリーとしての見栄えがするようバランスを取りながら、形を整える微調整を重ねていくのです。

またさらに、今回のケースではICカードポケットを設けたことにより、厚みが従来品の1/2となっています。厚みがある方が高低差を生かして起伏の表現がしやすくなりますが、高低差が少ない状態=つまりケースの薄さを保ったまま「深み」を表現することも苦労した点でした。これも実際のシワをスキャンしたデータを貼り付けたり、時には存在しないシワを描き入れたりして、手作業でリアル感や凹凸を表現していきます。

D3テクスチャーでデザインした最先端のデータを製品として完成させるには、同じく日本の繊細な技術を持った成形工場が必要です。

次元を生産した樫山金型工業は高精細の切削を得意とし、最新の機械設備と高度な職人技で、薄いケースでは考えられなかった深い立体感の表現に成功しました。

樫山金型工業株式会社 技術部 CAM係 山浦 宏徳氏

金型成形

立体感のあるテクスチャーは、切削面に大きな高低差が出ます。テクスチャーパターンの端、行き止まりの部分は垂直に下ろす刃に対して壁となってしまうため、そのままでは削るのが困難になります。

通常のケースは平面的なパターンが多く、ここまで立体的なテクスチャーのものはなかなかないため、見た目は垂直に見えるパターンの表面も数千分の一ミリ単位で斜めにカットするなど、「高低差のあるパターンを切削でいかにキチンと出すか」という部分に一番気を配りましたーー。

トリニティ株式会社 代表取締役 星川 哲視

次元プロジェクトの真実

過去、日本の金型技術は非常に高精細で高度な技術を活かして、世界の金型工場として一世を風靡していました。しかし、近年は中国をはじめとした海外の安価な工場にその市場を侵食され続けてきました。このまますべてを海外に持っていかれるのか、という危機の中、それでも世界が注目する金型工場が日本にもまだまだ存在するということを世の中に知らしめたいと常々考えていました。

次元シリーズは「コピーをしたければ、どうぞご自由に」ということをうたえるほど、海外では簡単に複製することができません。それは金型製作データ作成から実際に金型製作まで、独自の技術を使っているからです。もちろん絶対に不可能というわけではありませんが、膨大な時間と非常に高いコストがかかるため、コピーするメリットがまったくありません。

市場にありふれた中国製品ではなく、日本の最先端の3D技術を使ったデータ作成、高精細な特殊金型技術を活かした製品は、世界中を見回しても類を見ないほどの完成度を誇ります。そして、ただ難しいというだけでなく、本物のような質感、触感を提供したり、美しいデザインにすることで製品として完成に至ります。これをSimplismブランドとして世の中に送り出せたことは、日本の技術に対する自信を再び取り戻すきっかけになるのではないかと考えています。